100年に一度といわれる未曾有(みぞう)の世界的な経済危機が叫ばれる中、世界大恐慌を回避するために日本はどう対処すべきかの方向性を明確な言葉で示す人物がいる。
彼の一貫した言葉はバブル経済崩壊時に提言した言葉と同様に揺らぎはない。
今回2週にわたってお送りしたのは、野村総合研究所研究創発センター主席研究員、エコノミストのリチャード・クーさんをゲストに迎え、昨年出版した『日本経済を襲う二つの波―サブプライム危機とグローバリゼーションの行方』(徳間書店)の内容を中心に、今、世界大恐慌を回避するために日本と世界はどう対処すべきかを旧来の経済理論ではなく、独自の理論である「バランスシート不況」で分析。また、グローバリゼーション(国家や地域などの境界を越えて、地球規模に拡大して変化を引き起こす現象)の持つ意味。リチャード・クーさんが考える日本人の底力などのお話を伺いました。
『日本経済を襲う二つの波―サブプライム危機とグローバリゼーションの行方』は、菅原明子も絶賛の大変わかりやすい経済本になっています。
日本経済を襲う『二つの波』について、クー氏は、著書の中で、サブプライム問題を過去18年間の日本の不況と照らし合わせて分析。また、グローバリゼーションに関する対応策として、今の日本と同じ状況にあった1970年代の欧米の経験を分析しながら話してくださいました。
2006年、アメリカで起きた住宅バブルの崩壊。いわゆるサブプライムローンの問題は、アメリカで70年下がらなかった住宅価値を下落させた。
「今回の不況は、日本が全国的にバブルの崩壊をしたときの不況と似ています。」
日本のバブル経済の崩壊も、今回の世界経済不況も、リチャード・クーさんが提唱する『バランスシート不況(★)』に当てはまるという。
(★『バランスシート不況』とは、今までの経済学の基本が、企業は利益の最大化を目指して活動するということに対して、この十数年間の日本や、最近のドイツやアメリカで見られる債務の最小化を前提とした今までなかった動き。経済理論としては、あり得ない状態のこと。)
今の債務超過という状況からの脱却を図るためには政府が民間と逆のことをやる必要性があるというクー氏。
著書の中でも、バブル崩壊後、日本が実施した、公共事業中心の財政出動と政府による銀行への資本投入が今のアメリカにも必要であると結論付けている。
そして、追いつけ追い越せで戦後60年間を走ってきた日本が初めて経験する中国をはじめとするアジア諸国による追い上げというグローバリゼーションに関して、80年代までの成功体験が忘れられない日本企業やマスコミの多くに警鐘を鳴らしつつも、日本人の希望を語ってくださいました。
「マスコミに踊らされる人たちと(自分で)しっかりものを考える人たちがいますが、この国は、踊らされない強い自分をもった人たちが相当いるのが救いです。」
番組の最後に語られた、これからの日本に必要なこととして、「何もないところから作らなければならない時代。改善してから出せばいい時代ではない。常に、新しい切り口、真実を探求することが必要。」という言葉が印象的でした。
※
今回のエッジトークの内容がより詳しくわかるのは『日本経済を襲う二つの波』(徳間書店)です。
米住宅バブル崩壊とともに噴出してきたサブプライム問題、ドル危機、食糧・資源の高騰など、いま世界が直面している危機は旧来の経済学ではまったく対応できない「バランスシート不況」の分析で、世界大恐慌を回避するために、いま日本と世界はどう対処すべきかが明確に提示されています。ぜひ読んでみてください。