はっきりとした調査統計を見たことはありませんが、現代における理想の女性像を聞かれたら、多くの人が要因として上位に上げるのが「美しいこと」「優雅で品があること」「賢いこと」「強いこと」「優しさがあること」であるのは間違いないと思います。
今日のゲストは、異論をはさむ余地なく、そのすべてを兼ね備えていらっしゃるようにお見受けする、岸恵子さん。大女優であり、ジャーナリストであり、エッセイストであり、小説家であり……と、まさに多彩な分野で活躍なさっている、人として、また、女性として、ほんとうに素敵な先輩です。
女優としてデビューしたきっかけ、あの有名な『君の名は』『雪国』『おとうと』『悪魔の手鞠唄』『細雪』……の撮影・制作にまつわるお話をたくさんうかがいました。そして、フランスの映画監督だったイヴ・シャンピさんとの結婚・別離、パリと日本との往復生活、娘さんとの関係、また、ジャーナリストとして危険と隣り合わせで敢行したイスラエル取材、イラン取材のお話などなど、お聞きしたいことがありすぎて、時間はいくらあっても足りません。
「激動の人生」という言葉にするのはかんたんですが、岸さんが歩んでらした道のりをご自身の言葉でうかがうと、困難に立ち向かったご苦労とは聞こえてこないのです。あくまでも、美しい。
「記憶とはあいまいなものです。でも、客観的な事実とは違って記憶していても、本人がそう覚えていたら、それがその人にとっての真実。それでいいと思います」(岸さん)。
どんなことがあっても、そこから何かを得て素晴らしい真実にしていく強さがあるからこそ、美しくいられる。そう思いました。
最後に、いまの日本に望むことをうかがったときの、きっぱりとした表情が印象的です。
「ちゃんとした政治家に政治をしていただきたい。政治家という職業には、日本人の尊敬を集める人が就いていただきたいです。たまに漢字を読み間違えるのは、仕方ないとしましょう。でも、政治家は、せめて日本語をきちんと使える方でないと」。
世界を見て渡っていらした岸さんだからこそ語れる熱い思いであるにちがいありません。
お話の続きは、2009年3月29日(日)15:00~15:30・BS朝日、2009年4月5日(日)9:30~10:00・再放送「菅原明子の『一期一話』でどうぞ!