わたしたちが歴史に触れるのは、普通、教科書や歴史書、歴史小説です。しかし、そこに書かれている歴史は、果たして真実を伝えているでしょうか。著す人が伝えたいことを伝わるように書いたのだとしたら……。
書籍は知の宝庫ですから、そこから得られる価値は膨大ではありますが、それを鵜呑みにせず、自分の頭できちんと検証しながら疑問をもって読むことが大切だと思うのです。そんなことを再認識させてくれたのが、歴史小説『信長の棺』。今日は、作者の加藤廣さんがお越しくださいました。
明智光秀によって本能寺の変で討たれた織田信長。その遺体のありかは、いまだに謎のままで、織田信長は爆破されたので遺体がないという説、変を逃れて実は逃亡していたという説……、さまざまな憶測が飛び交っています。それを緻密な取材・調査、そして大胆な仮説によって解き明かしたのがこの作品です。
本作品は、加藤さんの作家としてのデビュー作。75歳でのデビューでした。加藤さんは、大学を卒業後、中小企業金融公庫に入庫し、その後、証券会社を経て中小企業・ベンチャー企業の経営コンサルタントをなさっていました。金融・経済のプロなのです。
「中小企業という、いわば弱者の立場にいる方々と一緒に仕事をしていましたから、資金力はなくても知恵によって大企業という強者に迫っていくダイナミズムを肌で感じていたのです。30代のころから信長に憧れたのは、尾張の一介の若侍がやがて天下をとるまでにのし上った人生が、当時の中小企業の姿と重なったためです」(加藤さん)。
そうして歴史を学んでいくうちに、資料として書物にあたるとさまざまな矛盾や疑問に突き当たったとおっしゃいます。
それを一つひとつ検証し、合理的な推理のもとに仕上げたこの作品。番組のトークは、そのなかには登場しない仮説にも及びました。ぜひ、放送をお聞きいただきたいと思います。また、放送を存分に楽しんでいただくために、文春文庫から出ている『信長の棺』を読んでいただきたいと思います。
お話の続きは、2月18日(水)・2月25日(水)23:00~23:30・ラジオ日本「菅原明子の『エッジトーク』でどうぞ!