今日のゲストは、みなさんもよくご存知の芥川賞受賞作家・楊逸さん。天安門事件とその後をテーマにした『時が滲む朝』による楊さんの受賞は、中国人作家として、また、日本語以外の言葉を母国語とする作家として、芥川賞史上初。
実は、この「番組収録日記」ですでにお伝えしたように、つい1カ月前、楊さんにはラジオ番組にもお越しいただいています。お話の中身の濃さはもちろん、おおらかで温かいお人柄の楊さんにこんなに早く再会できて、楽しい収録になりました。
『時が滲む朝』は、2人の大学生が民主化の理想を求めて天安門事件に参加しながら、挫折しそれを乗り越えていく青春を描いた作品です。舞台となる秦漢大学の学生がほんとうによく勉強している様子が描かれています。
いま、学生寮で消灯後に布団を被って勉強をする大学生が日本でどれだけいるかわかりませんが、少なくともわたしが大学で学んだ時代は、多くの学生が真面目に勉強に取り組んでいました。そんな思い出が重なり、この受賞作はわたしの大好きな作品です。
話題は、楊さんご自身の人生にまで及びました。教職についていた両親の下、ハルピンで暮らしていた一家は、文化大革命のため5歳半のときに北部の寒村に“下放”されたのです。冬になると、気温がマイナス30度以下になる土地で、窓ガラスもドアもない家での生活を余儀なくされました。
「両親は、もちろん辛かったと思います。でも、子どもだったわたしにとっては、楽しい思い出もたくさんあるんですよ」。
「挫折は、乗り越えたとき、いい思い出に変わる。だから、人生には挫折があったほうがいい」という楊さん。その強さと明るさは、次回作『金魚生活』だけでなく、今後、どの楊作品のなかでも礎になっていくのだろうと思いました。
お話の続きは、2008年12月28日(日)15:00~15:30・BS朝日、2009年1月4日(日)9:30~10:00・再放送「菅原明子の『一期一話』でどうぞ!