今日、日本の若い人たちは「青春」という時代を体験しているでしょうか。第139回芥川賞の受賞作『時が滲む朝』は、天安門事件前夜である1988年の中国を舞台に、主人公の「青春」を描くことから始まります。読んでいて、現代の日本の小説ではなかなか得られない、すがすがしい懐かしさが広がりました。
今日のゲストは、作者の楊逸(ヤン・イー)さん。『時が滲む朝』は、中国籍の作家として、また、日本語以外の言語を母国語とする作家として、はじめて芥川賞に選ばれた作品です。
楊さんが留学生として来日したのは22歳のとき、1987年。つい20年前のことですが、「持っていたお金は3万円だけ。両親がくれました」。友人の家に寝泊まりしながら、朝と夜、それこそ寝ないでアルバイトをして学費を稼ぎ、昼間、日本語学校で学んだのだそうです。
「楽しかった」と楊さんはいいますが、見ず知らずの、言葉も知らない国に来て働きながら勉強をして、その国の国語で小説を書く。しかも、母国の現代の空気感を描写した作品で権威ある賞を受けるというプロセスは、どんなに時間があっても全部をインタビューすることができません。
それでも、題材となった天安門事件への心情、民主化についての思いなどを、ていねいに、そしてユーモラスに語ってくださいました。
作品では、「漢字なら、日本の人も大体の意味をわかってくれると思ったので使った」という漢詩が出てきます。それを主人公たちの声を出して読む場面が、この作品の素晴らしさを象徴しているように思いますが、それをご自身で朗読もしてくださいました。ぜひ、お聴き逃しなく!
お話の続きは、11月5日(水)・11月12日(水)23:00~23:30・ラジオ日本「菅原明子の『エッジトーク』でどうぞ!