生きとし生ける者、すべてが経験する「死」は、かつての日本社会ではあたりまえのように日常生活のなかにありました。地方によって風習は異なりますが、「野辺送り」のような儀式には、子どもたちもごく普通に参加していました。
ところが現代社会、「死」は病院の限られた一室に隔離され、日常から切り離されます。そうして、わたしたちは生物としてのごく自然な最期を必要以上に恐れ、遠ざけるようになりました。
今日のゲストは、アルフォンス・デーケンさん。およそ50年前に来日し、やがて上智大学の教授に就任。「死生観」を抱くことの重要性、「死への準備」をすることの大切さを日本各地で教えていらっしゃる哲学者です。
デーケンさんが「死」に関する哲学の研究を続けてきた、その原点は?
「ドイツにいたとき、ホスピスのある病院でボランティアをしていたときのことです。残された命があと3日という、末期がんの患者さんを担当しました。
あと3日しか生きられない人に向けて、ニュースの話やスポーツの話をしても、なんの意味もない。だから、一緒に祈り続けたのです。これから死んでいく人と死を共有するという、人生でもっとも長かった3日間の経験によって、『死生学を一生かけて勉強したい』と思ったのです。その人が与えてくれた、人生の宿題だと思いました」。
こうして、ホスピスのこと、ボランティアのことと、温かいお話が続きます。最後に、感動的な言葉をうかがいました。
「ジョークとユーモアは違う。ユーモアは、悲しいにもかかわらず笑う、絶望にあるにもかかわらず笑う、『にもかかわらず笑う』ものです。つまり、相手やまわりの人への愛であり、思いやりなのです」。
どこまでも深く、無限の愛情に溢れたデーケンさんのお話は、ぜひ番組をごらんください。
お話の続きは、8月31日(日)15:00~15:30・BS朝日、9月7日(日)9:30~10:00・再放送「菅原明子の『一期一話』でどうぞ!